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東方七明暗~the freaky sight of the crazy night

別記事「東方七明暗」から読まないとわからないかもしれません。
酔いがもっと回ってきました。肉厚でしょう。

マリアリをメインに挟みながら、レイサナ→レイマリ→らんみょん→にと雛→えーけね→かぐもこ→さなかな→咲レミ→てゐすわ→天衣玖と、カオスに続きます。

追記で開きます。
ちょうどそのころ。
一同はゲームの二回目に突入していた。

「王様だーれだ」

ちなみに、一回目の王様は早苗。3番の人(魔理沙)に一曲歌わせて、大いに盛り上がったところであった。
みんながルールを把握した上での、二回目。

「あ、私だわ」

霊夢が赤い割り箸を高く掲げた。



「そうね、じゃあー、4番がー、」
ここで彼女は、先ほどの御神酒の瓶が既にして空になっていることに気づく。
「あ"っ」
「なんだよ」
さすが神のおわします場。
気品高い冥界の酒が気に入っていた霊夢は、うぎぎ、歯ぎしり。
だがしかし。巫女は今、王なのだ。

「4番の杯を王様が飲み干す!」
「ええーっ、そりゃないぜ」

4番、魔理沙の反応を見れば案の定、杯にはまだまだ冥界産の神酒が残っているようだ。楽しみながらちみちみとやっていたのだろう、彼女の顔には悔しさが滲み出ている。

「……させるか!」
「あぁっ」

魔理沙が酒を煽る。杯は一気に空になった。


「酒が…酒が……私の酒がー!」
紅白の目は据わっている。
「…悪いのはこの口ね?」
ゆらり、立ち上がると。
一気に魔理沙を押し倒した。



「ん…むぅ……っ」
「…ふぅ。やっぱまだ味残ってるわね。」
「ひゃめろ、霊夢!」
「美味しいわよ、魔理沙。…全部舐めちゃお」
「全部って、お前、どこ…むぁっ…ぁ…ふ…」



ガガガガガガガ
ガチキスDA!
アリスがとち狂ったのは言うまでもない。
だって、あれ、絶対挿入ってるよね。舌的な意味で。

何が困るって、初めは口の周りを舐められただけで抵抗していた魔理沙が、だんだん嬉しそうな表情になってきたこと。
あ、いや、困んないけど。二人仲良くやっててくれればいいけど。
あれ、ていうか、キスぐらいどうってことなくね? 早苗さんも神奈子さんも微笑ましく見守ってるよ?
あー、そっか、焦ってんのは私だけか。おk把握。把握把握。
キス、おっけ、キス。チッス!


…そんな思考回路を経て。
アリスの見境も無くなった。



そして、次のゲーム。
王様はアリス。

キス。おっけ、キス!
「1番とぉ、お、お、お、お、よ4番がキスで!」

さすがに王様って言えなかったぁああああ
こっぱずかしがるアリス。

けれど、まだ夜はふけたばかりなわけで。
またキスなの? マンネリね。
そんな不平さえ垂れながら、巫女ふたりが絡み合うような口づけを披露すると。




「…なぁアリス」


誰かが肩を抱いてきた。




少し遡って、こちらも『その時』。藍と妖夢は二人、酒を飲んでいた。

従者が二人。当然、お互い気を配りすぎる。杯に酒は足りているか。口寂しくはないか。互いが互いに、それも自然に手が出てしまうのだから困る。

(…もっと楽に構えられないものか。いつもこれでは、妖夢も気が休まらないだろうに)

庭師が、つまみを探す旅(もちろん藍の為の)に出ていくのを見遣って、式神は思う。自分のことを棚にあげてから、それに気づいて、苦笑。


ふむ…そうだな


妖夢が帰ってきた。狐はあぐらに組んだ足を緩め、手で腿の内側をぽんぽんと叩いて。


「おいで」


――誘ってみた。





妖夢は、つまみを探しに行ったというよりは、逃げたのであった。藍の優しさにこれ以上甘えてしまいそうな自分が怖くて。
修行が足りない。
今日に限っては、自制心が全く利かないのだ。

藍の尾の、なんて気持ちの良かったことか! 彼女の落ち着いた柔らかい声の前には、全てをさらけ出してしまいそうになる。
なんとなく、似ているのだろうなあと思う。妖夢の主、恋に近い憧れをも抱く、西行寺幽々子に。
でも、だからこそ。甘えるわけにはいかない。なんたって相手は、主人の悪友の式なのだ。


そんな、緊張感のようなものが。



「おいで」



その一言で、全て途切れた。







もふぅっ
妖夢が、藍の膝の上にダイブする。
「え…えぁっ、妖夢…っ?!」
自分から誘っておいて焦る藍。半人半霊の庭師は、構わず抱きついてから、
「…今さら離れろなんて、言わないでくださいね」
切なげに狐を見上げた。

「い、いや、そうじゃなくてだな…」

普通、お膝に抱っこって。
こう、なんていうか、下の人を椅子に見立ててと言うか。二人が同じ方向を向くものだと思っていたのだが。(少なくとも、橙を膝に呼んだら、そうなる。その態勢で絵本を読み聞かせたりするわけだ。)

…向きを変えただけで、こんなに近くなるものだとは、思わなかった。


近い。妖夢の顔。寂しげで、切なげで、何かを求めるように藍にすがりつく。
彼女が求めるそれが、幽々子の影だとわかっていても。
尚、抱き締めないわけにはいかなかった――。



「…あったかいです」
「私には、少しひやっこいな」

ふふ

二人同時に笑いが漏れる。
そのあとに妖夢を襲った震えが、悲しみであっても寂しさであっても。全てを抱き締めようと、藍は思った。




「雛っ」

げげ、声が近い!

「つっかまっえたぁーー!」


ぼっすん!
回転の勢いを止められないまま、雛は揉んどり打って倒れた。にとりはここぞとばかりに彼女を抱き押さえ、いそいそと珍妙な発明品の準備を始める。

「…河童に捕まるだなんて」

悔しくて言えば、河童はコードを繋ぐ手を止めた。

「回転の為の求心力がさ、逃げるって状況じゃエネルギー効率を悪くしてるのさ。」
一直線に逃げろと言いたいのか。
「それから…へへ。愛の引力を加速に利用した私が負けるわけないや」


言い方が気に食わなくて。
本当、厄いわ


丁度にとりはチューブを雛に繋ごうとしたところだった。仁王立ち。言い方を変えれば、『獲物から手を離している。』

すっと、風のように雛が身を起こしても、為すすべもなかったということだ。



ぞわわ。足先から障気が襲う。膝下にまとわりつくのは――八百万の神の一、畏れ多くも厄神様。

「貴女、知らないのね。他人の厄を溜め込む、本当の方法。――教えてあげましょうか」

「ひ…ぃなぁ……?」

貴い御顔は、熱を帯びて。どろんとした粘り気をも感じさせる視線を、すべからくにとりに向けていた。そうして、神は、にとりの脚をなぞりあげる。

――腕を絡めたまま、左手で右足を、右手で左足を、繊細な指を悉く駆使して舐め上げる。踝から、脹ら脛を愛おしむように撫で、ついには膝まで這い上がると、今度はスカートの裾越しに、彼女の太股に顔を埋めた。

「ひゅ…い…っっ 雛ぁ、くすぐった…い…っ」

「…にとりの厄を貰うのなんて、初めてね」

そして、案の定、厄は殆ど溜まっていないのだ。
雛は今度こそ溜め息をついて、

「…貴女には厄神なんて要らないのかしら」

そう、ぼやいた。




「違…雛が」
「何、よ」


「雛が居るから、雛は要らないのさっ」


にとりは色々な羞恥で顔を真っ赤にして、叫んだ。ちなみに、まだ雛の頭は彼女のスカートの裾付近にある。

それを聞いて――厄神も頬を火照らせた。

「な…っ」
「…っ」
「…」



「あ、あのさ、雛。作用反作用の法則、って、知ってる?」
照れ隠し。そっぽを向いて話を変える。
「…知らないわ」
「…今、そんな感じだったよね…」
「はぁ?」
雛がにとりを惹く力があるのなら、逆もまた然り。作用と反作用の大きさは等しいの。
そんな定理に浸れる幸せを、にとりは噛み締めていた。

「…わかるように説明してよ…」




紫の企みにいち早く気付いたのは永琳だった。
最も、いち早く気付かないことには、場の雰囲気に飲まれて、気付くに至らなかっただろう。


…輝夜と妹紅が、やけにいちゃいちゃし始めたのだ。

計画通り、と喜んでもいられない急変ぶり。加えて、耳の奥がキンとなるような独特の感覚。
――隙間妖怪だ。境界を弄ったな

それに気がつけば、永琳が気にすべきは一つだけだった。即ち。

奴の目的が輝夜なのか、はたまた不特定多数なのか。それだけである。


…試してみましょうか

丁度隣には――お堅い寺子屋教師がいることだし。



ふぅっ、と。
慧音の耳元に息を吹き掛けてみる。

ひゃぅんっ!

…彼女は鳴いた。
その瞬間、永琳は悟った。

紫の狙いは輝夜個人ではないと。


潤んだ瞳を向けてくる慧音の反応も勿論おかしいが、永琳自身もまた、件の妖怪の術中にあることを思い知らされたのである。
そう、普段なら、こんな試し方をしようだなんて思わないから。

「貴女、最悪…今晩の歴史は消せるわね?」
「あ、ええ、…え、ちょ、何をっ」

永琳は慧音の服の中に手を入れた。



紫の標的が、輝夜なのか、違うのか。

前者なら、月の薬師は迷わず隙間妖怪と対峙しに行っただろう。

だが、後者であるのなら。
ほら、姫はよく言うではないか。今を楽しく生きろ、と。
どんな状況であれ、楽しむことは罪ではない。
むしろ永遠を生きるものにとって、刹那の快楽はスパイス。腐らない為には必要なのだ。


――月下に見る彼女は、なんとも神秘的で美しいではないか。




「い、い…や……もうやめよ、輝夜…」

「わ、私だって止めたいわよ…っ。けど…ほら…やめる理由も、見つからないっていうか…」


なんでこんなことになっているのか。本人たちに聞いてもわからないだろう。

口喧嘩から、はじめに手を出したのは輝夜の方だった。妹紅の頬を平手で打とうとして、彼女に受け止められたのだ。
そう…自然に手を握り合う形になる。

そっぽを向いていた二人の距離は何故だか段々縮まって。気がつけばすぐ鼻の先に相手の顔があった。
そこから先に進むか否かで、彼女たちの神経は昂っているのだった。

「…ほら、私たち、女同士だし」

「そこ?! 突っ込みどころ、そこ?! むしろ…私、アンタのこと殺したいはずなんだけど」

「私もだ」

「すごく殺したい。」

「私…だって…」

「「…」」


言葉は裏腹。
距離は、更に近付く。




「魔…理沙……?」

どくん、心臓がみぞおちに引き絞られるように鈍く動いた。
魔理沙がいきなり肩に腕を回してくるのは、よくあることで。
…よくあることで。

「アリス、お前さ…」

何に戸惑っているのかと言えば、その回し方なのかもしれない。――柔らかいのだ、いつになく。

「あのさ…無理する必要ないぜ?」
「はあっ?!」

アリスは虚を突かれて素っ頓狂な声をあげてしまう。何を言われるのかと思えば、だ。

「何よ、どういう」
「さっき、何を言い澱んだ? 巫女達(あいつら)に指示するとき。」

畳み掛けるように恥ずかしいところを問いただされ、人形遣いの頭にカッと血が上った。
魔理沙の意図は読めない。急に口調を緩めて、
「その…」
唇に中指の背をあてて少しくアリスから視線を外す。

「何か変なんだよ、今夜は」

唇にあてた指。『何か』、には、先ほどの霊夢との口づけが含まれるのかもしれなかった。




「…確かにおかしいかもしれないわ。けれど、私は無理なんかしていない」
「いや、お前は無理してる。してるんじゃないかなぁ、って私が思うんだから、してるんだ。」

なんという身勝手な。

「いつも、さ、…そんなに頑張って周りに合わせようとしなくていいじゃんか。アリスは元々魔界の人間なんだ。私たちと認識が違うのは当たり前じゃ――」
「馬鹿言わないで!」

私とお前は異質なんだ
そう言われたようで、無性に悔しくなった。肩に回された手を振りほどく。
人間と妖怪なんて所詮は相容れないのだろうか。感覚も、感情も、時間すら、共有できないのだろうか。

「――ごめん」

気まずそうな魔理沙の謝辞。その声を聞いて、アリスは初めて後悔した。



ぽつりと、こちらこそごめんなさいと声に出すと、隣の彼女はふるふると首を振って、いや、と応じる。
「本当にごめんなさい。その…心配…してくれていたのに」
殊勝すぎると。我が身を笑いながら、また謝る。
「いや、それは私が――すまん」

一呼吸。訪れる沈黙。
そして魔法使いから出たのは、意外な言葉だった。



「…怖いんだよ」
「怖い…? そんな…魔理沙のセリフとは思えない」
「似合わないだろ? 情けないぜ。…けどさ、アリスにだけは…」
「わたし、に…?」
「…アリスにだけは、いつもみたいに潔癖で居てもらわないとさ、




――怖いんだ。
自分を押さえられなくなりそうで。」




早苗は下戸である。


と、いうよりは、酒に慣れていないのだ。

外の世界には『法律』というものがあって、20歳未満の飲酒が禁じられている。
人間が勝手に決めた規則に、風祝たる貴女が縛られる義理はない、とは何度も言ったものだが、その度に早苗は

「私も、その『人間』ですから」

と微笑んで、神の有り難い御託を退けてきた。


『…なちゃーん…』


うちの巫女さんはほんにお堅いこと。呆れ果てて言えば、先程まで一緒になって酒を勧めていたはずの諏訪子までが、

「まーまー、それが早苗の良さじゃないの」

なんてしたり顔で諭してくるもので、神奈子としてはぷぃと拗ねてみせるより他に何も出来なかったものである。それも、今となっては良い思い出。


『か…な…ちゃ〜ん…』


それにしても…。
稀に悪戯心を起こした神々が、水と偽ってアルコールを飲ませてみると、早苗は少々危険な程に壊れた。或る時は笑い、或る時は泣き、また或る時は怒り。幻想郷に越しても尚彼女を酒から遠ざけてきた理由は、それだったのだが…

酔ってるな。

紅白の巫女と躊躇わずに唇を合わせた早苗を見たとき、神奈子は直感した。
いくら酒宴の席とは言え、今晩は御酌に徹させたはず。なれば、緑の巫女を酔わせたのは、雰囲気か。
これはどうしたものか――


「かなちゃんってばっ!」
「うわっ、早苗っ?!」


考えに耽っていた神奈子にとって、早苗の襲来は唐突に過ぎた。

「あのね、あのね、」
…酔っている。今回は幼児退行か。彼女の小さい頃が思い出されて、ふわり、和むが。
「私もこの世界に来て挨拶の仕方を覚えました。」
芝居かかった調子で胸に手をあてた早苗は。


「おはよーのちゅーっ!!」
「うわーーーっ」


…見事に壊れていた。




「不可ません、早苗。仮にも私はアンタの神。不徳な態度をとってると…」
「だって、まずは挨拶の仕方から覚えなさいって言ったの、かなちゃんじゃない。」

ぷぅ、と頬を膨らませて。

「あーもー、可愛いなぁ…じゃない! 確かにそうは言ったが、アンタの認識は間違ってる」
「かなちゃんのいぢわるっ。郷に入りては郷に従えー!」

会話は見事に噛み合わず。どうするよ、と博麗分社の諏訪子に問えば、そのままでいいんじゃない、面白いし、と返ってくる始末。

「かなちゃーん、おなかすいた〜」
「恥を知りなさい?!」

早苗の視線は、神奈子のふくよかな胸に注がれていたりするのだった。




彼女たちの乱痴気騒ぎを、覚めた(この場合漢字は合っている)目で見る人たちもいるわけで。

例えば、吸血鬼とその従者。


「…おーい、咲夜ぁ」
眉をひくつかせ、従者に問う。

「…いかがなさいましたか、お嬢様?」
冷静沈着を装うも、お嬢様の言いたいことはわかりきっているようで。




「何なのよ、このカオス的ケィオゥス的な状況はぁっ。あっちじゃ宇宙人がねんねんごろごろ、こっちじゃ下僕達がよろしくやってるし、それにそっちじゃ…」
「…パチュリー様がいらっしゃらなくて、良かったですわね…」

そっち、に当たる方では、魔理沙とアリスが良い雰囲気だし、というわけである。
彼女達、紅魔館を出るのに手間取っていた。パチュリーを誘うのと、フランを誘わないのに手こずったのだ。
そして、ようやく宴会々場に着いてみれば。

「…八雲紫かしら。それとも、八意永琳?」
「前者は居りませんわ。後者は、そこの陰で。」

よろしくやっているというわけである。
何せ、吸血鬼たるレミリアまでを、『そういう』気分にさせるほどの実力の持ち主。それも博麗神社に入った途端なのだから、やはり人為が働いているのだろう。


などと考えていると。
ズザンッ!
咲夜がいきなり膝を付いた。なにやら必死に顔を腕に埋めている。
「さ、咲夜ぁっ?!」
「な、何でもありまへん、お嬢ひゃまっ」
…必死に。

――あぁ、成る程。
レミリアは瞠目した。

…彼女が時間を止めて何をしたかなんて、いちいち気にしてもいられない状況ではあるのだけれど。覗く真っ赤な顔から察するに、多分、『そういう』こと。

確かに気にしてはいられない。いられないけど。
メイドをからかって遊ぶのは、当主の役目じゃありませんか。


「…咲夜? 穏やかじゃないわねぇ、その美しい鮮血。」
「いゃっ、お嬢様、これは…」
「どこから出ているのかしら、想像はつくけど」
「も、申し訳…」
「どうして出たのかしらね? …フフン、想像はつくけど。」
「なななななっ」

必死に鼻血を止めようとしていた咲夜さん。このタイミングで、なりふり構わず顔をあげる。
「想像…とおっしゃいますと…そんな…」
だんだん、瞳には暗闇にも光るものが盛り上がって。

「本当に…私…っ。申し訳ございませんでした…!」

驚いたのはレミリア。うちの瀟洒なメイド長が、泣くなんて。
えええ、私、なんかしたぁ?







まぁ…なんだ。れみりゃは鈍感だといいよねっていう。




「てーゐ♪」

こちらに急降下してくる影。諏訪子だ。何やってんのあの子、と、てゐは思うが。
「何してるのよ?こんなところで。」
…どうやら、相手にもそう思われていたらしい。



「どーしてるもこーしてるもないわよー。見てよ、下。」
眼下、博麗神社周辺に広がるのは。混沌。長年の勘で妙な力を察知したてゐは、それの及ばない上空まで避難してきたのだった。

「ああ」
諏訪子はちらりと一瞥して、
「知ってたよ」
笑顔でケロリと言ってのけた。てゐはいよいよ呆れる。
「知ってたって…アンタねぇ」
「今日博麗神社に分霊しておいたの。早速役に立ったわ。」
「そんで、わざわざ本体がやって来たわけ? お山の神様は姿を見られちゃいけないんじゃなかったのー」
「う。だから、上から見にきただけよ」
「来た意味ないじゃん。」
「…あーうー」

神様をやり込めて、ひとまず満足の兎であった。



「ふ〜んだ。もういいわよ。てゐは、どうして混じらないの?」

神奈子と早苗の様子が羨ましくて、まだ初対面すら果たしていない幻想の巫女の宴に赴きまでしたというのに、彼女らと遊ぶこともままならない。
もどかしくて仕方ない神様にとって、てゐの避難行動は、不可思議でしかなかったのだ。

「馬鹿ねー。こーゆーのは、上から見てるくらいが一番面白いんじゃないの。」
「ややや。私もそれには同意しますね。お二人とも、はい、チーズ!」

パシャリ。小気味良いシャッター音と共に現れたのは。

「…うげ。鴉天狗」
「はいどーも、呼ばれて飛び出て射命丸です」
「絶っ対呼ぶもんか」

…最近、鴉天狗と嘘つき兎の相性は最悪である。



「小憎たらしい小兎ですが、言ってることには同意しましょう。確かに上から見ているのは愉しいし」
「最悪。アンタの場合見てるだけじゃないじゃない。下で下っ端天狗とでもニャンニャンしてくればー?」
「もみじもみもみ! それもまた良し。ですが残念。椛はワンワンです。」


(…愉快な子たち)
諏訪子はもどかしさも忘れて、楽しくなってきてしまう。別に見境なんか無くなんなくたって、幻想郷はここまで気ままだ。
外の世界からの引っ越し。ずっと張り詰めていた神経も、ようやく解き放つことが出来そうだ。

(けど…首謀者は、写真になんか残るの、嫌がるんじゃないかしら。)




正にその通りだったようで。

「てーゐーーっ!」
「文さぁーーんっっ」

「「げげっ?!」」

「もう…探したんだから…っ! アンタが居なくなって、私がどれだけ寂しかったと思ってるのよ…。」
「れーせん…?!」

「先輩っ!先輩とニャンニャンしたいです!!」
「椛…っ。ワンワン、少し落ち着きなさいっ」

ほら、刺客を差し向けてきた。


「どーなってんのよ、鴉天狗っ。ここは結界の外だったのにー」
「…あやや。広がってきてますね、結界。もうじき…ここも範囲内…」


そして。

「てゐー!」
「文さーん!」

「「はーいっっ!!」」

二人は大きな潮流に飲まれていった。


(…行っちゃった。良いなあ、楽しそうで)
お山のもう一人の神様が、表舞台に顔を出すことを決意したのは、この時だったという。




そしてそして。
「いいなぁぁぁぁ楽しそうでぇぇぇぇ」
聞こえよがしに同じ台詞を吐く少女が、お空の上に一人。
「い〜いなぁ〜〜」
だが、周りからの反応もなし。

「むきぃっ!」
彼女がイライラと投げた桃がぶち当たったのは、運の悪い龍宮の使いであった。

「…落ち着いてください、総領娘様。」
「もぅっ、聞こえてたならすぐに返事しなさいよ、役立たずのタツノオトシゴ」
「…衣玖です、永江の」


桃を投げつけて種族を間違えたくらいじゃ、天人さまの気分は晴れなかったみたいで。
「ねー、楽しそうなことやってるわよ、下界〜」
「あらそうですか。」
「ねーったらー」
ぶさぶさと龍宮のお使いのストールを揺さぶる。
「はいはい。総領娘様は天人たるお方、無用な欲は捨てましょうね」
「無用ですって! 失礼しちゃうわ。この、私が! 泥臭い地上の奴等と遊んでやりたいって言ってるのよ?」
「そうですねー」

気のない相づち。天子が下界進出を決意したのは、この時だったという。

「ねーったらぁ〜。見てよ、あそこの人間と妖怪。そうそう、両方金髪の。あの二人がさ〜」

…とりあえず今は、満足するまで喋り倒すつもりらしかったが…




初めに気がついたのは、背中が冷たいということだった。
質の良い、自慢のシルクのワンピース。繊維ごしに、草にしがみついていた夜露がしみしみと沁みてくる。

目の前を覆う少女を見てはいたはずだった。けれど、それは想定外だったから。
掠れた声が、アリス…、と漏れたのを聞いて初めて、全身で彼女を意識したのだった。

現金なもので、彼女と自分の状況を理解した直後から、心臓は早鐘を打ち始めた。
夜。視覚が制限されるだけ、他の感覚は鋭敏となる。感じるのは彼女の息遣いであり、脈拍であり、体温であった。
あの永夜と同じように。


「…ど…ういうつもりよ」
「はは…やっぱり、我慢できなかった」
「……酔っ払うのもいい加減にしたら」

出した声が震えているのがわかる。こんなことは、あり得ないと。拒否反応が起きたように顔は背いたが。

「…ふざけた気持ちなんかじゃない」

まさに、その言葉を期待した自分がいた。どくん、どくんと心臓が鳴る。なんなのよ、もう。アリスは唇を噛んだ。

「…好きだ。私は、アリスが好きなんだよ…」

どくん。どくん、どくん、どくん、
自分の血流に負けて身動きが取れない。
あぁ、私だって。

「…アリス?」

…私だって、魔理沙のことが、好きだったんだ――

「アリス――な、なんで泣いてるんだよ…っ?」
「そ…んなの…っ。わかんないわよ、馬鹿ぁっ」

アリスの震える唇は。
真っ赤になった魔理沙に塞がれた。

暖かくて優しいキスだった。




「それ、見なさい。賭けは私の勝ちね♪」
「勝ちは勝ちでも反則よぉ。おにぎりはもう返せないわ」
「おにぎりもお金もいらないわよ。勝ったという事実が大切なの。」
「もぅ、本当に負けず嫌いなんだから」

妙な賭け事に興じる少女が、二人。
妙な決着がついたところで、彼女たちは飽きたらしかった。

「さぁて。そろそろ戻してあげてもいいかしら。」
「いいわ〜。なんだかそろそろ可哀想になってきたし。」
「あら、庭師の心配なんてしてあげてるの?」
「庭師に散々に言われている主人の心配。」
「…自業自得ですわ。まぁ大丈夫、今夜の記憶はちゃぁんと消すから」
「何人かは、消えないかも知れないわね」
「ふふ」

紫は立ち上がると、開きっぱなしのスキマに手をかざし。

「気づいてしまったことは仕方がないもの。残った記憶なら、大切にすることね。――それ」

誰かへのエールと共に、幻想の宴に幕を下ろした。




アリスがガバリと跳ね起きると、辺り一面は惨状だった。
少女たちの亡骸――否、ぐっすりと眠りこけているだけだが、余りにも無防備が過ぎる――がゴロゴロ転がっている。たまに起きている者も、夢うつつをさ迷っているのがよくわかる寝ぼけっぷりであった。
そして彼女の隣には。

(…変な夢、見ちゃった)

気持ち良さそうに寝ている魔理沙の姿があって、アリスは顔を赤らめる。
――あんな夢見て、ようやくわかった。
私、魔理沙のこと――




妖夢が眠い目をこする。どうやら神社の宴会で酷く盛り上がって、そのまま寝てしまったらしい。
――しまった、帰って幽々子様の朝御飯を。
焦って覚醒した彼女の目に映ったのは、一筆籤。偉く達筆である。
何々?

『昨夜は大変失礼した。具体的なことはわからないが、紫様を問い詰める心算。場合によっては幽々子様も。ご了承頂きたい。』
――はて。
差出人は八雲藍、とある。身に覚えは、…ある気もするが、何故か思い出したくない。
彼女はとりあえず、夜明け前にお暇することにした。




妹紅は混乱していた。折り重なるようにして、輝夜と寝ていたからである。
罠か。新手の罠か。寝ているうちにとどめをさすべきか。
しかし――彼女が決断したのは、逃げ帰ることだった。何やってるんだか、と我が身を呪いながら。
寝ている輝夜が、余りにも幸せそうだったからである。




咲夜さんは瀟洒にご挨拶した。
おはようございます、お嬢様。こんなところでお休みになっては日の光にあてられますわ。お屋敷にお戻りくださいませ。

お嬢様はカリスマブレイク。
うーっ…うぅー

彼女達が昨夜の出来事を覚えているのかは、定かではない。ただ、どちらにしても、二人の朝は変わらなかっただろう。彼女は瀟洒で、また彼女はカリスマなのだから。




にとりと雛は同時に目を覚ました。そして同時に、先ほどまでの夜は夢だったのかと首をひねった。余りに薄ぼんやりとした記憶だったからである。
けれど何にせよ、隣に大好きな人がいる。それだけで、満足だった。
「雛ぁ」
「…なぁに?」
「おはよっ!」
また、二人の一日が始まる。




魔理沙が起きた。
「んぁ〜…」
一つ伸びをして、寝ぼけ眼でアリスを目視。おはよ、と焦って目をそらす彼女に挨拶を返してから、
「変なとこで寝たからか、変な夢を見たぜ…」
と呟いた。
人形遣いが相づちとも驚きともとれない妙な声で詳細を促せば、魔理沙はうなだれて。
「霊夢にファーストキスを奪われた」

同じ夢を見てた…?
アリスの心臓が高鳴る。
同じ夢なら、或いは。

「そ、それだけ…?」
「いや〜…それが…



続きが思い出せない」

がくっ。あ、今のはアリスがずっこけた音です。
けれど魔理沙の言葉はこんな風に続いて。

「思い出せないんだけどさ、なんか綺麗な夢だった気がするんだ。そりゃ、変な夢なんだけどな。あーちくしょ、なんだったかな〜」
「――綺麗、な?」
「あぁ。綺麗で大切な夢。」

さっきずっこけた土も乾かないうちから、天にも昇りそうに浮かれてしまう。恋する乙女とはなんとも気まぐれなものだ。
綺麗で大切な夢。魔理沙のその言葉だけを、大切に胸に秘めた。


――夜明けまでには、あと少し。
特別な夜に乾杯。朝から迎え酒を煽る魔理沙に、付き合ってみるアリスであった。


【完】
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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